Drインタビュー(脊柱管狭窄症の新しい治療法)

久野木順一 先生 日本赤十字社医療センター脊椎整形外科部 部長/脊椎センター長

腰部脊柱管狭窄症の治療意義

腰部脊柱管狭窄症の症状としては腰痛、下肢痛、間欠性跛行、麻痺(下肢筋力低下、膀胱直腸障害など)があげられ、保存療法で効果がない場合には手術療法を検討します。しかし腰部脊柱管狭窄症によってもたらされる障害はこれらの身体的症状だけではありません。まず歩行が難しくなることにより行動範囲が狭くなり、社会生活への参加の機会が減少します。また、運動量が減ることにより体力の低下を来たし、その結果内臓機能が低下し、ひいては寿命を縮める結果につながりかねません。長期にわたる痛みは慢性的な痛みとして心理面への影響を含め、患者様への影響をより重篤なものにします。
われわれ医師は目の前の患者様の症状ばかりではなく、その後起こりうる心理的社会的影響についても十分に配慮して治療に当たる必要があります。そして治療のタイミングを逃がした場合の、より重篤な障害についても配慮しなくてはなりません。

腰部脊柱管狭窄症治療の現状 

腰部脊柱管狭窄症の治療として、保存療法で効果がない場合には手術療法を検討します。手術療法では一般的に良好な成績が期待できます。しかし多くの手術療法は全身麻酔下でおこなわれるため、様々な制約を受け、合併症のリスクが常に存在します。心臓疾患、呼吸器疾患、腎機能障害、糖尿病、抗凝固剤投与状態の患者様、特に高齢者の患者様では手術が適用しにくい場合があります。これらのハイリスクの患者様の場合には障害の程度がむしろ強いにもかかわらず、必ずしも適切な腰部脊柱管狭窄症治療が受けられず、私は「腰部脊柱管狭窄症難民」と呼んでいます。

腰部脊柱管狭窄症の新しい治療方法

前述のような腰部脊柱管狭窄症による広範囲にわたる影響を考えると、これまで以上に積極的な治療が望まれます。手術のタイミングについてもたとえ神経症状が軽度でも、患者様の生活の質の低下につながっている場合にはより早期に実施してよいと考えています。
「腰部脊柱管狭窄症難民」として積極的な治療がおこなわれていない患者様に対しても局所麻酔下におこなえる間接的除圧術の適応がないか検討されてよいと考えます。

間接的除圧術についての感想

間接的除圧術は局所麻酔下でもおこなえる低侵襲の除圧術であり、適切な適応のもとに実施されれば、良好な成績が期待できます。また手術合併症のリスクも極めて低いです。「腰部脊柱管狭窄症難民」と呼ばれるハイリスクの患者様にも実施出来る可能が高いです。ただし間接的除圧であり除圧効果は通常の除圧術より低く、高度の狭窄例には適用されません。また除圧効果が持続せず再発することもあり、この場合には再手術が必要となります。

患者様及びご家族の皆様へ一言

腰部脊柱管狭窄症による障害は腰下肢症状にとどまらず、より広範なものです。担当医と相談して適切な治療を受けてください。一口に腰部脊柱管狭窄症と言ってもいろいろな病態があり、手術法もさまざまです。脊椎外科専門医に相談して、適切な治療法を選択してください。高齢やハイリスクなどの理由で全身麻酔の手術が受けられない場合、逆に症状が比較的軽く通常の手術を受けるほどではない場合に、局所麻酔でおこなえる間接的除圧術が適用されることがあります。しかしそれぞれの患者様の状態に適した手術が適切に実施される必要がありますので、この点についても脊椎外科専門医とよく相談してください。

 

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